キムビアンカofficial blog「脱ぎなさいよ」

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おだてられて木に登ってるだけのような気がしたんです。あの瞬間。


彼女は真っ黒のオカッパ頭の前髪を無意識に直しながら言った。
目にチックが入った。


それで?


私は故意に無愛想な返答をしてみる。
途端、彼女は嬉々として話し始める、どんな受け答えも返してもらえただけで満足、そんな感じだろうか。


彼はあたしに自分以外のどの人とも会ったり、連絡をとらないようにさせるのです。だからあたしは従順を演じるんです。それでね、毎晩ご褒美をくれるの。解るでしょ?アレがあたしを痺れさせてくれるから、あたしは彼のことばっかり考えてるんです。


幸せって誰かの鍵と誰かの鍵穴になれることだってあたしは思うんです。


彼女は陶器のようにスムースで冷淡過ぎる程に体温を感じさせない肌を少しだけ赤くして話す。


それが、どうして、そんな気分になったんですか?


彼は突然、情熱を失いました、義務的にあたしを抱いたんです、それが悲しくて、悲しみが咄嗟に怒りに変わって、あたしは彼を怒鳴りました、涙があふれて止まらなかった。彼は言い争いの後私を抱きしめました。どうにもならなかったので、そのままふたりで眠りました。その翌日からです、彼が私に気を遣い始めた。メールなんか嫌いな人なのに、作って寄越すのよ。私一瞬でも私をあしらった彼を自然と憎いと感じました。
だから、家出をしたり、他の人と連絡を取ったりしたの。
彼はある夜私を殴りました。
私が何を言ってもきかないから。
それからは刑事さんが知ってる通りです。


彼女の表情は同情を誘うようでありながらもどこか高揚していた。自分の口から出たことばに酔っているようだった。


わかりました
今日はここまでで結構です。


彼女は咄嗟に口角を曲げ、顔を歪めたかと思うと、大声を上げた。


あたしは何にも悪くないのに!


机に突っ伏して泣く声が笑い声に聞こえた。
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