キムビアンカofficial blog「脱ぎなさいよ」

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substitute for Love
“けったくそわるい”
マリアはたばこの煙と一緒に吐き捨てたセリフに
メロドラマの主人公が乗り移ってるみたいで
ちょっと恥ずかしいと思った。
でもほんの一瞬醒めかかった感情は
また直ぐに水面の下へと沈んで行った。

夜明けにはまだ早い頃
マリアは部屋にたどり着いた。
愛猫の雪はマリアの脱いだジャケットの下敷きになった。
不満そうに部屋を退散していく雪を無視してカウチに座り、
たばこに火を点けた時、
彼女は思わず”あっ”と声をあげた。
いつも完璧に塗られているネイルの人先指がガタガタになっている。
しかもその原因は自分で作ってしまったのかもしれない、と思った。

マリアは時々無意識に爪を噛んでしまう。
それは決まって彼女の中のささくれた感情がとぐろを巻いて
どこにも行き場を失っている時なのだ。

マリアはルームメイトのシンを大声で呼んだ。
二回名前を叫んだら、シンが伸びをしながら部屋から出てきた。
“おかえり、マリア、どうしたの”
ハーフパンツからは長い膝下が伸びている。
シンは隣に座ってマリアの肩を抱いた。
マリアはことばを吐くかわりに
シンに右手を見せた。
シンは 大きくて美しい手でマリアの右手を包んだ。
“あたしの中に沸き起こる感情のすべてに目を凝らしてるのに、
金とかセックスであたしを苦しめようとするなんて許せない”
とマリアは下唇を突き出した。
シンのやわらかい手が髪を撫でる。
そんな時マリアは雪の気持ちがわかる気がする。

実際、マリアにとってシンだけが唯一信じられる男だ。
シンは女を抱かない。
シンはマリアから何も奪おうとしない。

“マリアは無意識の悪意に目をつぶれないんだね”
シンはバーボンソーダをマリアに手渡す。
“あたしとあんたは似てるの”
マリアはグラスを持ってベッドルームへ向かう。
ハイヒールを脱ぎ捨ててベッドに横になると涙が流れた。
やっとだわ、マリアは少し安堵してシンに感謝する。
シンが即興の振り付けを踊りながらベッドルームを覗いた。

マリアは涙が見えないように顔を伏せた。
本当は伸びやかなシンの体を盗み見たかった。
だからその代わりに
“シン、こっちに来てよ”
と彼にだけ言えるわがままを言った。
シンは軽く息をつきながらマリアの隣に寝そべった。
“ダンス好みじゃなかった?”
“ううん、あなたのダンスは最高、世界の何よりも嫉妬を覚えるわ”
“知ってるよ”

シンの美しく鍛えられたからだが近くにあるだけで
無条件にマリアを安心させ、武装を解除する。
平和ってこういうことなのよ、
ふとマリアはシンの胸に抱かれながら思う。

“あんたを愛してる”
言いかけてマリアは眠りに落ちた。
| キムビアンカ | ショートストーリー | comments(2) | - |
姐さん (2009/04/22 12:36 AM)
一気にそのワールドに引き込まれたー。うまく言えないけど、KIMちゃんの感性が好き。
私の大好きな森瑤子さん(知ってる?)の文を思い出したよ。

昔の自分は色んな文を書いていたのに、忙しさを理由にいつの間にか書かなくなってしまった・・。
いや、書きたいんだけど、書こうと思えばいつでも書けるさと言い訳続き。また書こうかな・・・

なんだか急にKIMちゃんの歌を聴きたくなったぞーい。
キムビアンカ (2009/04/22 3:01 AM)
姐さん



ありがとう
うれしいな


ようこさんはあたしも大好きな作家さんのひとりです☆


このストーリー、続くかも?!